samehada_restartの日記

過去調査資料などを残す場所

TCD-D10 と TCD-D10-PRO の 外部I/F

数年前に TCD-D10 (無印) 及び TCD-D10-PRO(※) の赤外線リモコン化(PROについてはRMR-D3的なもの)を検討した際に調査した内容。予想・予測が含まれるし間違ってる可能性も高いが、ここに残す。

なお、素人工作ではPROの外部I/F用コネクタを用意するのは非常に難しい。かつて、一部のピン(デジタルI/O用のピン)が有効なコネクタを一度だけ作れたが、二度目はなく。そのコネクタを使用してデジタルI/Oケーブルを作ったはずだが...所在は不明。

※外部I/Fについては TCD-D10-PRO2 も TCD-D10-PRO と同じである

 

通信I/Fと信号線

両者とも外部I/F用ジャックに接続する有線リモコン(リモートコマンダー)が用意されている。
たぶん無印用のみと思われるが、赤外線リモコンユニットも用意されていた模様(詳細は不明)。

リモートコマンダー(以下リモコンと記載)と本体は「シリアル通信」を行っており、リモコン側では BU3508K というICを使用してスイッチ操作入力を元に信号を本体に送信する。BU3508K はSONYのカスタムチップらしく公開情報は皆無で、資料を見つけてもピンアサインが判る程度であり、各々のピンの意味・用途といった詳細は不明。

通信には  L/S, SCK(SW), SD の3つの信号線を使う。
シリアル通信といっても、赤外線通信やRS232C的な所謂「調符同期方式」ではなく同期信号(SCK/SW)による同期方式となる。L/S信号とSCK(SW)信号は本体側コントローラICが出力する。これらにタイミングを合わせてリモコン側IC(BU3508K)がSD信号を出力する。

L/S信号

  • Load/Shift の略。複数デバイスと通信を行うための切り替えを担う。
  • TCD-D10(無印)の場合、SCK,SDではリモコン信号しか扱わないため、ロードシフトというよりトリガ的な使い方をしている。常時Highで操作信号の受付処理時に 2us程度の間 Lowになり、すぐにHighに戻る。
  • PROの場合は、文字通りロードシフトとして機能しており、Low時はメカ制御信号を、High時は操作信号を扱う事を示す切替信号となっている。High(操作)は約340us維持されるが、Low(メカ制御)の時間の方が圧倒的に長い。

SCK,SW信号

  • タイミング信号。通信同期をとるためのもの。Synchronized Clockとか?
  • 無印の場合、定常時 Low で L/S信号の変動後に High (1.5us) への変動が16回行われる(SCK信号, 12.5us (Low 11us) 間隔)。1回目は L/S信号 が Low になってから11us ほど経過した時である。SCK 信号は BU3508K の KCK ピンに接続される。
  • PROの場合は定常時Highとなる(SW信号)。Low/High (7.2us/7.2us)を8回くりかえし、20usの休止(High)の後、もう1回 Low/Highを8回行う。最初のLow/High変動はL/SがHighになってから20us程度経過してから行われる。この信号は BU3508K の SW~SWB ピン経由でKCKへ入力される。休止が入るのは、ICが8ビットで動いていて何かしらの割込処理が必要だから?

SD信号

  • 操作信号 (Signal Data ?)。操作入力 (SW0~SW16の 17個のDIピン) に従い、同期信号に合わせて操作信号を出力する。「出力なし(操作なし)」の時の定常状態に SW16 か SW0 の入力を使用するため、何れかを固定にしておく必要がある。このため実際に扱える操作数(コマンド数)は最大16となる。
  • L/S信号 (IN) が Low の時は出力しない。無印であれば本体側が無視するだけだが、PROの場合はメカ制御信号と混信してしまう可能性(通電中のコネクタ抜き差しは御法度だろう)。
  • L/S信号 が変化するタイミング(High->Low および Low->High)で、SD信号(OUT)を 操作入力#16 (SW16ピン) の入力値(High/Low)にする。
  • L/S信号 が Highの時は KCK信号 (IN) の変動に合わせて、操作入力の内容に従い SD 信号出力を変動させる。
  • SWBピンには SW の反転信号が出力される。SD 変動をHigh→Lowのタイミングにしたければ、クロック信号を SW に入力して SWB からの出力を KCK に入力する(PROの方式)。

 

操作信号のタイミングチャート

無印とPROでは挙動が異なる。

TCD-D10 信号チャート

TCD-D10-PRO 信号チャート

 

リモコンの互換性について

どこかのWEBサイトで「RM-D10K(無印用赤外線リモコンユニット)を改造してPRO2で使った」という内容を見たことがある(※1)。

ここでいう「改造」はコネクタ変更(※2)の模様であったが、各機の信号の違いを知るに従い「そんな事が本当に可能なのか?」という疑問が生じたため考察(予想)。

(※1)当該サイトは既に無くなってる模様。
(※2)如何にしてPRO用のコネクタを用意したのか?という疑問は置いておく。丸型12ピンのコネクタのうち、操作用信号3本とGNDの4本, 若しくは+5Vを加えた5本だけ使えば良いのだけど、細いピンが密集している状態のため、規格品(コネクタパーツ)を用意できなければ、不器用な人間には無理である。PRO用の有線リモートコマンダの配線をカットすれば良いかもしれないが、それは勿体ない話である。

無印用リモコン を PRO筐体 につなげた場合の動作予想

  • リモコン操作有無に関係なく、常に時刻「-」操作を行っているとみなされる。但し、本体側のSET操作で時刻調整モードに入らないと当該操作は無効となる。
  • リモコン操作時も常に時刻「-」操作が同時操作されているような信号となるが、操作優先度により本体側では時刻「-」は無効操作となる。
  • 時刻あわせは難しいが、録音日時が正確に記録されたところで確認できるのはSONYデッキ(の一部)のみと考えると問題は...外録では致命的?

PRO用リモコン を 無印筐体 につなげた場合の動作予想

  • リモコン操作と実際の動作が異なる状況になる(例:PLAY操作でSTOPする)。
  • REW操作は絶対にできない(REW操作でPLAY動作となるが、REW動作に対応する操作がない)。
  • 本体側で時刻「-」操作を認識できない(操作なし扱い)。

結論

無印用リモコン を PRO筐体 に接続する場合は「単なる録音・再生用途であれば」使えるかもしれない。逆は流石に無理と思われる。

 

 

デジタルI/Oについて

これも調べてケーブル試作も行ったが、純正ケーブル(XLR用)を入手した事もあり製作する動機が無くなってしまいお蔵入り。

デジタルI/Oのピン

  • TCD-D10-PROの外部I/Fコネクタは12pinであり、デジタルIO用に6pin用意されている。具体的には、OUT(Y), OUT(X)、IN(Y), IN(X)、P/C、GND(D/I)  となる。
  • P/Cはデジタル出力をAES/EBSかSPDIFか選択するためのスイッチ。Professional (AES/EBSを意味する?) と Consumer (SPDIFを意味する?) の略と思われる。オープン(High)でAES/EBSとなり、GND(D/I)とショート(Low)でSPDIFとなる。入力については本体内部のICが伝送データから判定するのでP/Cピンは関係しない。
  • INは入力、OUTは出力。各々の X, Y はXLRの平衡伝送用。SPDIFで同軸ケーブル(不平衡伝送)を使いたければ、X,Yの何れかをGND(D/I)とショートすれば対応可能ではある。

 

AES/EBU規格とSPDIF規格

AEU/EBSとSPDIFでは伝送データの C-0bit が異なる。規格上では出力電圧など物理特性の違いもあるが、TCD-D10PROはSPDIFを選択してもAES/EBS+XLR規格の特性からは変動しない。

各々は、おおよそ以下把握しているが、規格書をきちんと読んだわけではないので間違ってるかもしれない。

AES/EBU
・プロ用で長距離伝送に対応するためにXLRなどの平衡伝送を使う
・XLRでの出力はインピーダンス 110Ω、2~7Vp-p(110Ω終端)
・同様に入力はインピーダンス 110Ω、200mV~7Vp-p(規格策定当初 最大10Vp-p)

SPDIF

・長距離伝送は不要とし、TOSLINK, 同軸ケーブルによる不平衡伝送で賄う
・同軸での出力は、インピーダンス 75Ω、0.5Vp-p(75Ω終端)
・同様に入力は、インピーダンス 75Ω、0.2V~0.6Vp-p

 

TCD-D10 PROの内部構成

XLR前提となっている。

補足事項

  • 数m程度の距離での信号伝達目的ならインピーダンスマッチングに神経質にならなくてもよい(「意識して聞けばわかる」としても、そのような事に神経を注ぐ時点で、音楽鑑賞の意味を見失ってることに気付くべき)。
  • 平衡出力データを不平衡に変換することについて、位相に言及する人がいたら静かにフェードアウトするのが吉。
  • TCD-D10-PRO自体は SPDIF出力指定であっても XLR規格での出力しか対応してない模様。SPDIFでの入力は0.2~0.6Vp-pなので、AES/EBU(XLR) の7Vp-pをGNDショートによる不平衡変換しただけでは上記範囲には収まらない。まともな製品であれば入力に何かしらの対策が施されてるはずなので問題ないと思われるが。なお、純正のSPDIF対応用ケーブルでの処置内容は(持ってないので)不明。

ついでの追記

  • TCD-D10 PRO というワードで検索すると、「Pro2はProにデジタル入出力端子を追加したもの」という記載を見かけることがある。おそらく誰かが書いたのを転用してるのだろうけど、知らないのなら黙っておけば良いのに。
  • SPDIF規格は時代に合わせて変化(拡張)している。サンプリング周波数やデータビット数の種類が増えて、初期の製品の中には最新の機材からの出力をキチンと取り込めない場合があるかも。
  • 「AES/EBUだから音が良い」「XLRだから音が良い」という主張については、所詮は個々人の主観の世界だから、当人がそのように感じるのならそうなのだろう。此方からは何も言えないし、何を言っても聞き入れないだろう。デジタル信号の波形の立ち上がりが少々鈍っていたところで、という話。